プロジェクトを円滑に進めるには?請負/準委任(SES・ラボ)開発を活用

プロジェクトを円滑に進めるには?請負/準委任(SES・ラボ)開発を活用

DX推進やAI活用の高まりにつれ、今後ますますIT人材不足が加速していくことが懸念されています。IT人材の採用や育成には時間がかかることもあり、外部の優秀なIT人材を活用することで、プロジェクトやDXを迅速かつ円滑に進めたり、方法によっては、ノウハウを蓄積していくなどの期待もできます。今回は、IT人材の動向とシステム開発における内製化支援についてご紹介いたします。

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1.IT人材の動向 

過去には、企業がシステムの開発・運用・保守を一括して外部ベンダーに委託する形が主流でしたが、市場の急速な変化に対応する必要性や社内DXを推進するにあたり、これらの業務を自社の従業員が主体となって行う内製化への動きが以前にも増して高まってきています。内製化にあたっては、社内の優秀なIT人材の確保が重要となりますが、採用・育成のためのコストや市場でも優秀なIT人材が不足していることから、安易であるとは言えません。特にAI、IoT、クラウド、セキュリティ、データ分析をはじめとする高度な専門技術を持つ人材へのニーズが高まっており、質・量ともに課題を抱えています。

 

情報処理推進機構(IPA)の「DX動向2024調査」によると、IT人材の量の不足感は調査を開始した2021年から年々増加しており、2023年には「大幅に不足している」と答えた割合が過半数を超える結果となっています(2024年2月~5月に1,013社が回答した結果)。また、DXを進める際の人材関連の課題として、9割近くがシステムの内製化における人材の確保や育成が難しいことを挙げていることも見えてきました。一方、DXで成果がでていると回答した企業では、人材確保の方法として、社内人材の育成の他に、経験者の採用、社外専門家や特定技能を有する企業や個人との契約を挙げており、積極的な外部人材の活用が鍵となるようです。

このことからも、課題となっているIT人材の確保や育成に対して、外部の専門家や企業が持つ技術やリソースを活用しながら、自社で自律的な業務の体制を築いていくことは今後より重要になってくると思われます。

 

引用元:

経済産業省:デジタル人材の育成

独立行政法人 情報処理推進機構:DX 動向 2024 – 深刻化する DX を推進する人材不足と課題

2.開発における様々な手法 

DXを推進するにあたって、高度なシステム開発やAI活用は欠かせないものです。ここでは、主なシステムの開発手法である、請負開発、常駐型(SES)・ラボ型開発の違いについて見ていきます。従来は、外部に開発を依頼するには、請負開発が一般的で、成果物やプロジェクトベースでの契約となっていました。近年は、準委任契約の常駐型(SES)やラボ型開発といった開発手法も広く用いられるようになっています。それぞれの違いや適した開発について紹介していきます。

2-1.請負契約

請負契約で行う開発は、外部のベンダーに開発を依頼し、成果物の納品をゴールとする開発形態です。契約の段階で成果物、納期、費用などの要件を決めます。決められた期間や費用の中で納品物を完成させる必要があることから、ウォーターフォール型開発が適しており、あらかじめ決めたプロセスに基づき、開発の上流工程から下流工程までを計画的に進めていきます。

請負契約では、専門的な開発を外部のベンダーに一括で委託することができますが、要件の変更がしづらいことや、社内の内製化には結びつきにくいというデメリットもあります。

  • メリット 

    ・成果物に対する完成責任はベンダー側が持つことが多く、発注者側はリスクを回避しやすい

    ・契約時に納期と費用が明確になるため、計画や予測を立てやすい

    ・システム開発を外部に委託することで、自社のビジネスに集中しやすい

  • デメリット 

    ・急な要件変更に対応できないことや、変更への追加費用がかかる場合がある

    ・ベンダー側に一任する傾向が強いため、発注者側が開発の進捗や内部構造を把握しにくい側面がある

    ・社内にシステム開発のノウハウが蓄積されず、内製化の障壁となることもある

2-2.準委任契約(常駐型・SES)

常駐型開発(SES)は、SESベンダーのエンジニアが発注者側の企業に常駐してシステム開発や保守運用などを行う開発形態です。費用は、エンジニアの労働時間やスキルに対して支払われるため、成果物に対する責任は発生しません。SESは、一時的な人材不足の解消を目的としており、IT人材の採用や教育するコストをかけずに専門性の高い人材を確保できるというメリットがあります。発注者側の社員は、常駐するエンジニアからスキルやノウハウを得ることができるため、それらを活かして内製化につなげることもできます。

  • メリット 

    ・特定の技術を持つエンジニアを一定期間、確保できる

    ・採用、育成コストの一部を軽減できる可能性がある

    ・SESベンダーがマネジメントや指示を行うこともあり、発注者側の負担を減らすことができる可能性もある

  • デメリット 

    ・長期間の依頼や工数の変更でコストが高くなる可能性がある

    ・エンジニアは成果物に対する責任は負わないため、品質や納期の責任は発注側が負う

2-3.準委任契約(ラボ型)

準委任契約のもう1つの方法として、社内のIT人材不足を解決するために、近年採用されるようになってきた開発手法がラボ型開発です。ラボ型開発とは、システム開発における外部委託形態の一つで、一定期間、社外の人材で構成する専属の開発チーム(ラボ)をつくり、発注者側の指示に基づいた開発を行う開発手法のことです。

ラボ型の契約では、開発期間ベースでの契約となるため、契約期間中に開発内容の変更をしたい場合や、仕様が明確に決まっていない場合でも柔軟に対応できる点が従来の請負契約と異なります。ラボ型では、計画と実行を短いサイクルで繰り返すアジャイル型開発が適しています。変化に柔軟かつ迅速に対応できるからこそ、その都度クライアントの要望や仕様の変更にも対応しやすくなります。また、中長期的に開発チームが関わることから、社内の内製化支援にも活用することができます。

  • メリット 

    ・柔軟な仕様変更に対応できるため、市場動向を反映しやすい

    ・開発予算(人件費)が想定しやすく、追加費用がかかりにくい

    ・比較的長期間チームで開発を行うため、知識やノウハウが蓄積されやすく、内製化へのスムーズな移行にもつながりやすい

  • デメリット 

    ・短期間の開発や想定より必要な工数が少ない場合には、不要なコストがかかることがある

    ・初対面の人同士でチーム構築をする場合や、オフショア開発を取り入れる場合には、コミュニケーションがハードルになることもある

    ・発注者側のプロジェクトマネジャーの管理能力が成果に大きく関わる

ここまで、3つの開発手法をそれぞれ紹介してきました。次の章では、それぞれの開発手法をさらに比較していきます。

3.契約方法による比較 

上記でも説明したように、請負契約は、準委任契約に比べて開発途中での仕様変更は難しく、柔軟性は低い傾向にあります。変更内容によっては、追加の費用が発生することもあるため、初期の要件定義を明確にすることが重要です。
また、請負契約での開発は納期が決まっているため、安定した開発には向いているといえますが、現在の市場やユーザーニーズの急速な変化に対して、開発途中での要件変更に対応できないことや、市場の反応を見ながら試行錯誤を繰り返すような新規の事業開発には向かないことなどがデメリットとも言えます。

 

準委任契約の常駐型(SES)とラボ型の違いについてもみていきます。どちらも準委任契約ではありますが、目的や開発内容、開発体制に違いがあります。ラボ型開発は開発チームのオフィスで、中長期的な特定のプロジェクト開発にチームで取り組むことが多いのに対して、SESは発注者側の企業にエンジニアが常駐し、日常的な開発業務や保守運用などのサポートを行うことが多いです。SESは、一時的な人材不足の解消を目的としており、IT人材の採用や教育するコストをかけずに専門性の高い人材を確保できるというメリットがあります。

一方、ラボ型開発では、メンバーの入れ替えがなく長期にわたり同じメンバーが開発に携わるため、プロジェクトのノウハウが蓄積されやすいですが、SESはエンジニアの入れ替わりによってノウハウが引き継がれない可能性があります。

内製化支援を活用するにあたっては、プロジェクトがどの開発手法に適しているかを確認しながら進めていく必要があります。

 

契約形態 請負契約 準委任契約(常駐型・SES) 準委任契約(ラボ型)
開発期間  中長期  短~中期  中長期
開発の柔軟性

比較的低い

(仕様変更には追加費用が必要)

比較的高い

(期間内での仕様変更が可能)

比較的高い

(期間内での仕様変更が可能)

適した開発

ウォーターフォール型開発

アジャイル型開発

アジャイル型開発

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4.まとめ 

ここまで、開発における契約や支援の方法についてご紹介しました。優秀なデジタル人材の確保や育成は、プロジェクトの成功やビジネスの飛躍にも直結すると言えます。

クロス・コミュニケーションでは、金融業を中心に300以上の豊富な開発実績があり、プロジェクト推進における各フェーズで最適な開発方法を提案いたします。請負での開発だけでなく、SESでの支援や内製化支援も承っておりますので、是非、お気軽にお問い合わせください。

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執筆者

株式会社クロス・コミュニケーション編集部

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