アプリマーケティング戦略最前線

アプリマーケティング戦略最前線

スマートフォンの定着に伴い、世界的なモバイルアプリ市場は拡大を続けています。モバイルアプリの種類はSNS、音楽、動画、写真から、ゲーム、交通、買い物、金融に至るまで様々なサービスが登場し、今や人々の生活に欠かすことのできないツールとなっています。

企業にとって、モバイルアプリは顧客との重要な接点としてニーズが高まる一方で、競合アプリがひしめく中で継続して利用を続けてもらうためには施策が必要となります。

本コラムでは、最新のアプリマーケティングについて解説していきます。

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1.アプリマーケティングのおさらい

アプリマーケティングとは、自社で運営するモバイルアプリケーションを広め、利用者との接点を増やし、利用者増加と継続利用を促進するための活動のことです。
アプリマーケティングの主な目標は、アプリの可視性を高めること、ユーザーの関心を引きつけること、アプリのダウンロードやインストールを増やすこと、そしてユーザーエンゲージメントやサービス収益を最大化することです。ユーザーの利用状況を様々な方法で測定して、施策に活かしていきます。アプリマーケティングの基本的な施策については、以前、関連コラムでもご紹介していますので、ぜひご一読下さい。

2.様々なアプリの計測指標(KPI)

アプリのリリース後は、関連するサービスでの位置づけやその役割による計測指標(KPI)を設けることが大切です。

課題やステージによって適切なKPIを設定し、正しく効果を検証することで、アプリ改善、ひいてはサービス改善のための最善の方法を導き出すことができます。
アプリのKPIは、業界やアプリカテゴリー、目指すKGIによっても変わりますが、主に下記のような指標が活用されています。アプリエンゲージメント指標は、ユーザーとアプリの関わりを測定することに用いられ、収益指標は、そのアプリがもたらすサービスへの影響度を可視化することができます。

  • アプリエンゲージメント指標例
  • インストール数:アプリをインストールした数
  • 継続率:アプリユーザーの継続利用の割合
  • 離脱率:アプリを離脱したユーザーの割合
  • DAU/MAU:日や月ごとのアクティブユーザー数
  • NPS®(Net Promoter Score):そのアプリをどのくらい他者に推奨したいと思うか、リサーチによって得られる評価
  • 収益指標例
  • CPI(Cost per Install):アプリインストール1件あたりのコスト
  • ARPU(Average Revenue per User):ユーザー1人あたりの平均売上高
  • 課金率:ユーザーで課金した人数の割合
  • ROI(Return On Investment):投資した広告費に対して生まれた利益率
  • LTV(Life Time Value):特定ユーザーが自社の商品・サービスを初めて利用してから、終了するまでに得られる利益

  • その他評価
  • アプリストア評価:App StoreやGoogle Play Storeの★による評価

この他にも、必要に応じてより細分化をしていくことで、施策の効果が見えやすくなることがあります。

また、こういったユーザからの評価とは別に、パフォーマンス自体の評価をすることもあります。例えば、速度の計測やクラッシュやバグ数など、これらについても会社の部門によってはKPIとして追うべき指標になることがあります。

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中でも、公式アプリをリリースしている企業がKPIとして多く設定している指標があるようです。いくつか取り上げて見ていきます。

2-1.アプリ継続率

アプリエンゲージメントには、前章で挙げた継続率やインストール数、DAU、離脱率などの指標があり、企業やサービスのステージ、外部環境によって、どのような指標を重視するかは異なります。その中でも継続率はアプリの成功を測定する指標の一つとなります。

アプリ継続率の算出には、ユーザーを一定条件でグループ分けし、ユーザーごとの動きを分析する「コホート分析」を用います。この指標により、アプリから離脱するタイミングや理由を分析することができます。

  • 継続率の計算方法

    アプリの継続率は、アプリをインストールしてから30日間を一区切りとしてアプリを利用しているユーザーの割合の変化を分析し、下記の計算式によって求めることができます。

    例えば、インストール初日の新規顧客数を1,000人とした場合、その時点での継続率は100%となります。そこから30日後に継続して利用している顧客数が400人の場合、この計算式にあてはめると継続率は40%となります。

    継続率が高ければアプリ内での収益につながりやすく、継続率が低ければUXに応えられていない可能性があります。

    アプリの継続率=継続顧客数÷新規顧客数×100

    例)仮に、1日目のアプリ利用人数が1,000人で、30日後の継続利用人数が400人の場合
      400(人)÷1,000(人)×100 = 40%

  • 地域やカテゴリー別の継続率との比較 

    アプリの継続率は、国別や地域ごとによっても特徴が変わってきます。
    グローバルで比較した場合に、アジア地域は7日後で12%と比較的高く、中東・北アフリカ地域と北米の10%に比べると高い傾向にあるそうです。
    アプリカテゴリーやサービスの特徴によっても継続率は大きく変わります。アプリで実現している機能が、実際の生活やライフスタイルへの関連性や重要度が高ければ高いほど継続性が高いものになるからです。継続率を比較するには同じカテゴリー内のアプリとの比較をする必要があります。

    カテゴリー別で見た場合、2022年に30日後の継続率が最も高いのはフィンテックアプリとライフスタイルアプリでした。銀行やクレジットカード、証券やキャッシュレス決済アプリなど、日々のお金の管理との結びつきと重要度が比較的高いことが影響しているものと思われます。ライフスタイルアプリは、会員証やポイント機能があるアプリも多いことから、利用頻度も高く、継続的に利用されていると考えられます。

    継続率がやや低いのはハイパーカジュアルゲームアプリです。日々多くのゲームが生み出されることから、いわゆる「流行」によって左右されやすいカテゴリです。ターゲット層が幅広くゲームのつくりがシンプルであることも、30日という長い目で見た時に定期的なアクセスにつながりにくいようです。対して、RPGやオンライン対戦、ややゲームに慣れたり取説が必要なタイプのゲームに関しては、いわゆるコアターゲットが利用するケースが多いこともあり、ハイパーカジュアルゲームよりは、継続率が高くなっているようです。

 2022年 世界のカテゴリー別 30日後の平均継続率 

 フィンテックアプリ     9%
 ライフスタイルアプリ    9%
 ヘルス&フィットネス    7%
 ソーシャルアプリ      7%
 ゲーム           6%
 Eコマース            5%
 旅行            4%
 フード&ドリンク      3%
 ハイパーカジュアルゲーム   2%


引用元:
ADJUST「2023年のモバイルアプリ継続率のベンチマーク」

2-2.アプリストアの評価

App StoreやGoogle Playといったアプリストアでは、1〜5のスコアとレビューによってユーザーによるアプリの評価がなされます。新規ユーザーはアプリストアの評価を参考にすることがあるため、評価が高いか低いかがアプリダウンロード(コンバージョン率)に影響があるといえます。
また、アプリの評価とレビューは、App StoreとGoogle Playのアプリストアのランキングアルゴリズムにも関わります。評価の高いアプリはランキングが上がり、より多くの人の目に触れやすくなります。
アプリストアのレビューをあげるためには、ユーザーのレビューに対して返信をしたり、UI/UXに基づいたアプリ開発をしてユーザーの満足度をあげること、ユーザーがアプリを体験した時にポップアップなどで評価を促すという方法があります。

 

2-3.LTVを把握する

LTV(Life Time Value)は顧客生涯価値といい、特にアプリに限定すると、ユーザーがアプリを利用してから終了するまでにもたらす利益のことを指します。LTVを把握することで、サービス自体の提供価格や販促に関する意思決定や適正化を行うといった戦略を立てる際にも役立ちます。

LTVの算出方法は、いくつか存在します。サービスの特徴や提供価格形式などにより、適切な計算式で算出し、指標を設定すると良いでしょう。下記にいくつかの例を記載します。

  • LTVの計算方法例

    ①LTV=顧客1人あたりの平均収益÷離脱率
    ②LTV=平均購買単価 × 購買頻度 × 継続購買期間
    ③LTV=顧客単価×収益率(粗利率)×購買頻度×取引期間-顧客の獲得・維持コスト

例①)仮に、顧客1人あたりの平均収益が30,000円で、離脱率が10%だった場合

   30,000(円)÷0.1 = 300,000円

例②)仮に、顧客1人あたりの平均購買単価が3,000円で、購買頻度が月に2回、2年間継続購入だった場合

   3,000(円)×2(回)×24(ヶ月) = 144,000円


例③)仮に、顧客獲得・維持に30,000円(粗利率25%)かかった顧客が、月額5,000円のサブスクリプションサービスを3年利用した場合

   5,000(円)×0.25×1(ヶ月)×36(ヶ月)–30,000(円) = 15,000円

 

基本となるのは、顧客の平均単価や継続期間で、いかに単価を上げるか、いかに多くの顧客に長く利用して頂けるかが、サービスやアプリの存続にも大きく関わってきます。サービスの特徴やアプリの役割によっても使い分けが必要で、継続的に指標を追っていく必要があります。また、サービスを利用してもらうための広告費や販促費を多く出稿している企業は、かかったコストも計算式に取り入れることで、適切な単価設定や販促費の設定にも活用できるかもしれません。この他にもLTVの計算方法は複数ありますので、適切なタイミングで適切な指標を取り入れていくと良いでしょう。

3.利用率や継続率を高めるための施策

アプリをダウンロードしたあとの継続率を見てもわかるように、 ダウンロードした後もアプリに価値を見いだしてもらわなければすぐに離脱されてしまいます。前段でも説明したように、顧客に継続してサービスやアプリを利用してもらうためには、ユーザーにとって有益な施策を行う必要があります。
どの施策を行う上でも、指標を設け、計測してそれぞれの効果を分析することが非常に重要です。前述したように、アプリのカテゴリや特徴によって、ユーザーの利用目的も異なるため、効果的な施策は異なります。
下記は、アプリ内に設置することで利用率や継続率に効果的な施策の一例です。

  • 【例】
  • カスタマーサクセス(オンボーディング・チャットボット)
  • アプリのパーソナライゼーション

  • スタンプラリー

  • ギフト連携

  • クーポン発行

  • プッシュ通知、アプリ内メッセージ

  • プロモーション・キャンペーン

上記のうち、アプリインストール後に、特に最初の離脱率を低くするためには、オンボーディングの活用が有効です。スライドでアプリの使い方を簡単に説明したり、ユーザーに必要な情報を設定してもらうことで使いやすくし、アプリの第一印象を良くします。
その後はユーザーがアプリを利用する際に、質問に迅速に対応するサポート体制も重要です。AIチャットボットであれば24時間すぐに回答してくれるため、顧客満足度を高めることにつながります。

パーソナライゼーションされたアプリは、ユーザーから収集した情報に基づいた最適な情報を提供するため、ユーザーエンゲージメントを向上させます。

 

他にも、継続的なアクセスでポイントやクーポンのサービス特典がもらえたり、有益な情報を得られるコンテンツがあると定期的なアプリ訪問につながります。最近では、貯まったポイントをギフトに交換できる仕組みを取り入れている企業も増えてきているようです。そのサービス内だけでの利用に留まらず、親和性や利便性の高い機能を追加できると、より利用率は向上しやすくなるでしょう。

アプリを訪問するメリットを伝える手段としては、SNS等を使ったプロモーションやキャンペーンでの認知度向上、プッシュ通知やメッセージ機能が活用できます。インストール後にしばらくアクセスがない休眠ユーザーに対しても再訪問を促すきっかけにつながります。


アプリの機能もユーザーの利用状況に合わせた改修が必要です。ユーザーデータを分析して、良く使う機能を使いやすい場所に配置するといったUIの改善は随時行う必要があり、ユーザーロイヤルティを高め、ユーザーとの関係を維持していくことにもつながります。

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4.まとめ

ここまで、アプリマーケティングの施策についてご紹介してきました。
アプリマーケティングと言っても、アプリごとに目指すものは異なり、測定した効果を元にした分析と対策が必要となります。

クロス・コミュニケーションでは、豊富なアプリ開発と運用実績から、総合的なアプリマーケティングの支援が可能です。是非、お気軽にお問い合わせください。

 

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株式会社クロス・コミュニケーション編集部

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