いまさら聞けないCRMの基礎知識④~施策の実行力を爆速で高める3つの視点~
このコラムは『いまさら聞けないCRMの基礎知識』と題し、CRM(Customer Relationship Management)を活用したマーケティングを推進するための重要なポイントをご紹介しています。
CRMが実施できている状態にするための3つの取り組みのうち、前回までに「1.データ分析による現状把握」「2.検証環境の構築」をご説明しました。
今回のテーマは「3.施策の実行」です。
効果をもたらす施策を爆速で実行する秘訣を実例を交えてご紹介します。
目次
これまでのおさらい
まずこれまでのコラムをおさらいしましょう。
「CRMが実施できている状態」にするための取り組みは
- データ分析による現状把握
- 検証環境の構築
- 施策の実行
とご紹介していますが、”業務の流れ”を意識してもう一度確認してみましょう。
「①現状把握から課題を見出し、②効果検証の環境を整えたら、③施策の実行」という流れになっています。
執筆者には「③施策の実行の後に、④検証の実行がある」の意がありますが、そうだとしても②と③が逆のように感じられる方がいらっしゃるかもしれません。あるいは、そもそも大した違いではないように感じられるかもしれません。
しかしながら、②と③の順には明確な意図があります。
あえて②を独立させているのは、効果検証の環境を整えるという共通言語化ができていない状態のままで施策を立案・実行したことで、正しい効果検証ができなくなっているケースが非常に多く見受けられるからです。
施策の成り立ちを考えてみてください。施策は「この値をこれだけ改善しよう」といった目標を立てた上で考えられています。
つまり、目標に到達したかどうかが検証できないはずはないのです。もしも検証ができないのであれば、それは目標設定そのもの、もしくは施策設計に誤りがあるということです。
もちろん施策立案後に検証条件を検討することはありますが、それは検証内容をより深くするためであって施策の成否そのものを判断するためではないのです。その点は混合せぬよう注意が必要です。
企画立案から着手し、実行後に「これって成果があったの?」➡「(あまり売上は上がらなかったけど)サンプルが少なく、検証には不向きな施策だった(ということにしてしまおう)」といったことが起きていませんか?
もしもドキッとした方がいらしたら、ぜひとも前向きにとらえてください。
いまその問題に気づいたということは、今日から改善できるということです。
「①現状把握から課題を見出し、②効果検証の環境を整えたら、③施策を実行し、④成果を検証する」という流れを徹底しましょう。
施策立案における基本的な考え方
前述の通り、「この値をこれだけ改善しよう」といった目標を立てた上で施策は立案されます。下図の『③そのために何をすればいいのか』が施策にあたります。
『②どうしたいのか』を計測可能な項目にし、これまで繰り返しお話した共通言語化をしておくことが非常に重要です。
「顧客満足度を上げ、売上向上を図る」といった目標が掲げられることを目にしますが、顧客満足度が計測できないのであれば、目標は見直すべきです。
<例:共通言語化に向けたフレーム>
① Targeting(誰を)
初回購入から半年の間に購入がない会員
② Goal Design(どうしたいのか)
2回目購入率を〇%から△%に引き上げたい
③ Scenario(そのために何をすればいいのか)
サイトへの再来訪を促すために施策Aを実施
いますべき施策を決める基準とは?
今回のテーマである「施策の実行」ですが、『現状把握から「施策が足りていない」という課題を設定したが、どのような施策をしたら良いのか分からない』というご相談を多くいただくことから、「メール施策の立案」にフォーカスしてお話します。
「メール施策が足りていない」
これは担当者でも、責任者でも、感じることは少なくないと思います。
すでに何十もの施策を実施していながらも、不安感から足りないと感じるケースもあれば、まだまだ立ち上がったばかりというケースもあります。
どちらにおいても「売上を伸ばすための施策」に注力することを進言します。
「効率化」も重要な課題として挙げられますが、効率は結果が積み重なることで初めて取り組むことができます。
ホームランが打てるか、ヒットが打てるか、それとも三振してしまうかを考える前に、とにかく打席に立つことです。打席に立たなければ、ヒットを打つことも、三振をすることもないので、次に活かすタネさえ得られません。
たとえ三振したとしても、これまで積み上げたヒットの数が減る(=売上が減る)ことはないので、恐れることは何もありません。
まずは打席に立ちましょう。
実行するかどうか議論の余地がない施策を積み重ねる
売上を伸ばすための施策を検討する際には、以下の3つに留意することが重要です。
- 実行するかどうか議論の余地がない施策を積み重ねる
- 大きな売上よりも業務負荷が小さい施策を優先
- 部分的な改善よりも施策の幅を広げることを優先
まさに「共通言語化」を体現していますが、あまり深く考える必要はありません。
「この施策はなぜ実施するの?」との疑問が直感的に浮かばなければ、それで良いです。
こちらは、ECサイトにおける代表的なメール施策の例です。いわゆる鉄板施策と呼ばれるものです。
これらの施策を「すぐに売上が上がる施策なのか?」ではなく、「なぜこの施策が必要なの?」という視点で、施策の優先順位を付けてみてください。
「受け手であるお客さまに、この施策を実施する理由を説明する必要があるかどうか」と解釈を深めてみると、より直感的に考えやすくなると思います。
誕生日に「お誕生日おめでとうございます」というメールを送ることに説明が必要でしょうか?受け手は「誕生日にバースデーメールが届くのはなぜだろう?」とは思いません。それは、送られてくることに明確な理由がある(思い当たる節がある)からです。
あなたが受け手になったとして、これら9つの施策からより自然な施策(=疑問を感じない)をいくつでも選んでください。
優先順位を付ける方法はたったそれだけのことです。
関係各所も含めた大多数が疑問を感じない施策としてピックアップしたならば、その施策を実行するかどうか議論する必要はありません。
これによって必然的に実行までの時間が大幅に短縮されます。発言力の大きさは関係ありません。
【実例】疑問を感じるかどうかを判断基準にする
『メール施策の効果が落ちてきたのは、メルマガを送り過ぎているからでしょうか?』という質問をいただくことが数多くあります。
みなさんはどうお考えでしょうか?
執筆者の答えは「ノー」です。
施策の効果と配信回数には絶対的な相関性はありません。問題を生んでいるのは配信回数ではなく、配信回数とコンテンツのバランスです。
質問です。
- 購読している新聞が毎日届いたらどう思いますか?
- 購読している週刊誌が週に一度届いたらどう思いますか?
- 購読している月刊誌が月に一度届いたらどう思いますか?
いずれも回数には何らストレスを感じないと思います。
- 毎日届く新聞が50ページ並みの厚さだったらどう思いますか?
- 週に一度届く週刊誌が百科事典並みのボリュームだったらどう思いますか?
これは主観が混ざりますが、ストレスを感じる方は少なくないと思います。
つまりストレスになるかどうかは、受け手が得たい情報量と提供頻度のバランスが取れているかがポイントになっているのです。
メール施策の効果が落ちている要因はメルマガの配信頻度ではなく、メルマガのコンテンツにあります。
価格変動や在庫状況が刻一刻と変わる商材、たとえば航空券や1点もののアイテムなどであれば、受け手はタイムリー、かつシンプルな情報を求めます。
一方で、ブランドヒストリーのような読み物であれば読み応えが重視され、読み終わる頃に続編が届くくらいの頻度が適切に感じられます。
実行するかどうか議論の余地がない施策を、どのタイミングで送れば良いのか?
毎日送る必要があるのであれば毎日、月に一度で十分であれば月に一度。ただそれだけのことです。
ただし、送る必要があるかどうかを企業目線で判断しては決してなりません。
受け手が欲しているからこそ送る必要があるのであって、送り手が送りたいから送る必要があるのではありません。そこには大きな違いがありますので、注意が必要です。
大きな売上よりも業務負荷が小さい施策を優先
メール施策は、施策立案から始まり、コンテンツ制作、条件設定、配信設定、検証と多くの工程を要します。工程が複雑になればなるほど、関係各所との調整が必要とされます。
「大きなインパクトを小さな労力で生む」
それがベストであることは当然ですが、それができるのであれば課題は生まれていません。
まずは「小さな労力で何かしらの成果を生む」と、ライトに考えてみましょう。
条件設定を複雑にしない、流用できるならばコンテンツは流用するなど労力を抑える方法はあります。議論の余地がない施策をスピードを最優先にして、小さな労力で稼働させましょう。
部分的な改善よりも施策の幅を広げることを優先
検証結果から改善点が見出されます。
目標値に届かなかったことは改善の理由になりますが、それは偶発的な事象かもしれませんので、やはり検証環境の整備は重要です。
改善についても、関係者において議論の余地がないレベルであればすぐに着手するべきですが、そのようなレベルでないならば、保留することも視野に入れておきましょう。
というのも、目標値との乖離が大きいのであれば改善の工数を割くことに意義が生まれやすいのですが、そもそも目標値が現実離れしていたかもしれませんし、施策が間違っていたのかもしれません。
また、目標値との乖離が小さいのであれば改善の工数に見合った成果が得られない可能性もあります。改善することに一定の労力を注ぐのであれば、新しい施策を検討した方が良い場合もあります。
たとえば、15%の結果を40%改善しても、15%×1.4=21%の成果しか得られません。
一方で、40%改善するのと同じ工数で8%の結果を生む施策を新たに実行すれば、15%+ 8%=23%の成果が得られます。
ビジネスに貢献するということは、後者を指すのです。
結果を無視し、改善を見送り続けるという訳では決してありませんが、「施策を増やす」ことが戦略上の方向性であるならば、いますぐすべきことはヒットを打つ確率を高めるよりも、打席に立つ回数を増やすべきです。
それが「施策の幅を広げる」ということです。
総括
CRMを推進するための3つの取り組み
CRMの効果は後から確実に表れる
執筆者が考えるCRMが実施できている状態とは、「社内事情にあった運用体制のもと、言語が共通化されていて、意思決定が円滑に行われている状態」です。
その道のりは決して楽ではありませんが、必ず成果は表れます。
あとがき
いかがでしょうか。
メール施策を例にお話をしましたが、「何のためにするのか? 誰のためにするのか? それによって何を得るのか?(与えるのか?)」を原点としていますので、みなさまが日ごろ感じていらっしゃるマーケティング課題全般にも当てはまるのではないでしょうか。
ここまで全4回に渡って『いまさら聞けないCRMの基礎知識』をご紹介しました。
必要以上に難しく考えず、いまできることを実直に進めることが重要であることもご理解いただけたかと思います。
CRMを成功させるために、まず一歩を踏み出してみましょう。
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